人口約2万4千人の離島にある長崎県立壱岐高が18日、第97回選抜高校野球大会の開会式に臨んだ。中学で県大会優勝を争ったライバル校の選手たちが島の同じ高校に進み、甲子園へ。漫画のような物語が現実になった。
福岡市からフェリーで約2時間。玄界灘に浮かぶ壱岐島(壱岐市)は「野球の島」だ。島内4校の中学は、男子生徒の約3割が軟式野球部員で、サッカー部はない。全国の島の中学野球チームが集う大会「離島甲子園」は優勝3回を誇る。
そんな島の玄関口の一つ、郷ノ浦港近くの小高い丘に、壱岐高はある。左翼側が狭い左右非対称のグラウンドで取り組む練習の一つが、地域の人から贈られた丸太を抱えてのベースランニング。「20~30キロの重さが雨水を含むとさらに増す。筋力や下半身の強化に役立つ」と浦上脩吾主将。
選手21人とマネジャー4人は全員が島育ち。エースの浦上主将や岩本篤弥捕手ら主力の新3年生の多くは中学時代、軟式の県大会で上位進出の常連だった。
浦上主将がいた島南部の郷ノ浦中は、2022年春の九州大会で優勝。岩本捕手らが通った北部の勝本中はその夏、県大会で優勝し、全国大会に出場した。
そんなライバルだった選手たちが声をかけ合い、島に残って甲子園を目指すことを決意した。
浦上主将は「壱岐から甲子園に行きたい思いが強かった」。岩本捕手は「入学した時、集まったメンバーを見てワクワクした」と振り返る。
彼らを「黄金世代」と呼び、「どんなチームになるだろう」と期待してきた人がいる。
「壱岐野球の礎を築いた」と島の野球関係者から敬われている市立中学教諭の竹尾勝彦さん(56)。岩本捕手は勝本中時代の教え子で、浦上主将の実力もよく知る。
竹尾さんは島で育ったが、甲…